2011年11月30日 (水)

「バイキンです よろしく」第十八回(最終回)

《おはなし》
さっきまで、あんなにいばっていたバイキンが、「おねがいします」なんて、いったんだ。
なにをおねがいされるんだ!
じょうだんじゃない!
モニカを殺したくせに!
「いやだ!」

ミリはかんがえていたとおりに、自動車に火をつけた。
どすぐろいけむりがあがった。
見ているまに、車は火につつまれた。
パチンパチンと火花がとんだ。
きっと、バイキンの子がはじけるんだろう。
ミリは、空にあがるけむりを見あげて、
「とうとう、やってやった!」
と、さけんだ。

日がきえた。
自動車はまるやけだ。
一ぴきのバイキンも見えない。
火にすいとられたみたいだ。
――そのとき、グルグルグル……という音がしました。
あの、三きのヘリコプターだ。
ヘリコプターは海岸におりた。
みんなが出てくる。
かけてくる。
ゴロも、ロクロもいる。
「どうしたの?」
と、ゴロがいった。
「バイキンをやき殺してやった。」
と、ミリはぶっきらぼうにこたえた。
「どうしたって?」
「やき殺したんだって。」
「よくやったね。」
「すごいぞ、ミリ。」
と、みんながさわいだ。
ミリはまた、ぶっきらぼうに、いった。
「きみたちもやれよ!
にげるなよ!」
みんなはだまってしまった。

――そのうちに、だれかがいった。
「ぼく、にげるの、やめた!」
「ぼくもやめた!」
「ぼくもやーめた。」
「あたしも!」
「あいつら、やっつけるまでは、にげないぞ。」
みんなはヘリコプターにのりこんだ。
ミリも、ドカンとのった。
ヘリコプターはうなりを高めて、町へひきかえしていった。

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2011年11月23日 (水)

「バイキンです よろしく」第十七回

《おはなし》
ミリは自動車をくるったようにとばした。
ジェット機よりもはやく!
じどうしゃはやぶや林の上を、星みたいにとんだ。
そうして……
海岸にでた。
あたりはいちめんのすなだ。
ここなら、なにをしたって、あんしん!
ミリは自動車のドアをあけた。
うしろのせきで、
「◇≡☆ヰ└♪#%%%」
と、という声がした。
そこを見た。
――子どもが生まれていた!

こゆびくらいのバイキンが、
ウヨヨウヨウウウヨヨヨウヨヨウヨウヨウヨヨウヨウウウウヨヨヨウヨウヨヨウウヨウヨウヨウヨヨウウヨヨヨヨヨヨヨヨウヨヨ……
と、いっぱい!
ミリは目を見はった。
やっぱり、二億か、三億はいるだろう。
それが、死んだどぶねずみにたかるうじむしのむれのように、おやのバイキンの上にのっかっているんだ。
それに……
ミリはおどろきで気をうしないそうだった。
それに、その子どものバイキンは、おやのバイキンのからだを食べているんだ!
おやのバイキンは、子どもを生んだうれしさでわらうどころじゃない。子どもに食べられるいたみで、ころげまわってくるしんでいた。それでも、おやのバイキンはいった。
「ミリくん……この子どもたちを……おねがいします……。」

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2011年11月16日 (水)

「バイキンです よろしく」第十六回

《おはなし》
やがて、自動車はやぶの中の道を通った。
そのとき、頭の上で、
ブルルルルル……
と、いう音がした。
見あげると、大がたのヘリコプターが三き。
みんなが、ヘリコプターにのって、町をにげてゆくんだ。
あの中にはクスリやのロクロもいる。
ぎゅうにゅうやのゴロもいるだろう。
みんなは、ま下をミリとバイキンののった自動車がはしってゆくのを見おろしているだろう。
「あれはなんだね。」
と、バイキンは車のまどからのりだしてきいた。
ミリは、いろいろきかれるのがめんどうくさいので、
「カだよ。」
と、こたえた。
「カ? ふーん。カもこのごろは、うまいものをたべているか、すごく大きいんだね。」

それどころじゃない。
自動車の中は、ポカポカと、はるのようにあたたかいんだ。いつ、バイキンが子どもを生むかわからない。
はやくこのやぶの中を通りぬけて、海岸にでないと、たいへんなことになる。
いっぺんに、二億、三億、のバイキンの子どもが生まれ、自動車をやぶって、夜の中へおどりだすんだ。
そうなったら、ミリひとりの力では、どうすることもできない!

――バイキンが、きゅうに、へんなうなり声をあげはじめた。
「¥¥¥……☆☆***◇※Σ……&&∴>……%%%……***……〒○√▽……。」
あたまのにくをしぼられ、せぼねにくぎをうちこまれるようなかんじがした。
きっとバイキンのことばで、
「いたい! いたい! いたいよう!」
と、うめいているんだ。

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2011年11月 9日 (水)

「バイキンです よろしく」第十五回

《おはなし》
「『バイキンさん』って、わたしのこと?」
「うん。あなたがね。そうりだいじんみたいにえらくなってね。むねにくんしょうをつけてね。世界中のバイキンにそんけいされる話さ。」
「ふーん。おもしろい。で? くんしょうはいくつ?」
「え?」
「くんしょうはいくつだときいてるんだ。」
「そうだね……。十五こぐらい。」
「十五こ? ……やめた。映画なんて、おもしろくない。」
「十五こじゃない。百こだよ。」
と、ミリはあわてていいなおした。
「百こ! おまえって、なんて、けちなんだ!
とにかく、映画はやめた。
おれをばかにしとる!」
これいじょう映画をすすめても、おこられそうなので、ミリは話をかえた。
「じゃ、ダンス、やりにゆかない?」
「だんす! ゆこうゆこう。
おれは、ダンスがもうれつにすきなんだ。」
「ダンス、しってるの?」
「しってるよ、もちろん!
おれ、きのうの夜生まれたときね、とてもうれしくて、さっそく、ダンスやったんだ。」
「よし、きまった! でかけよう。」
――バイキンはミリの自動車を見て、いった。
「これにのってゆくのか。」
「うん。」
「中はあったかいのか。」
「ううん。」
「あったかくないと、いやだな。」
「じゃ、あったかく、してやるよ。」
バイキンはうなずいて、うしろのせきにのった。
自動車は町とはんたいのほうにむかった。

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2011年11月 2日 (水)

「バイキンです よろしく」第十四回

《おはなし》
いくらバイキンがこわいからって……。
一ぴきも殺さないでにげだすなんて。
いやだな。
それにぼくはモニカにやくそくしたはずだぞ。
かたきはとってやるって。
……………………………。
ミリはにげるのをやめた。
しっぱいして、バイキンにとかされたって、かまうものか。
ここでにげたら男じゃない。
ぼくはにげないぞ。
あいつを殺すまで。

バイキンはいびきをかいた。
「ЖЖЖ……ДДД……ΘΘΘ……。」
バイキンのいびきをにんげんのことばになおすことはとてもできない。が、かなり、やかましい。
ミリはストーブの火をけした。
「ちょっとあったまれるば、子どもが生まれる。」と、ロクロがいったからだ。
たしかに、バイキンのはらが、ふくらんできたようだ。
こんなところで生まれたら、たいへんだ!
バイキンが目をさました。
「ストーブの火、けしたね。
すぐつけてくれ。」
ミリはいってみた。
「バイキンさん、映画見にゆかない?」
「エイガ? なんだい? それは?」
「いろいろたのしい話が、空いっぱいのスクリーンにうつるんだよ。おもしろいよ。」
「ふーん。どんな話?」
「『バイキンさんのいっしょう』って、話だよ。」

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2011年10月26日 (水)

「バイキンです よろしく」第十三回

《おはなし》
ロクロの話では……
ゆうべわいた千びきのバイキンは、とてもひどいらんぼうをしているというんだ。
ひげをそれ。
あたらしいぼうしを買ってこい。
さかだちしてみろ。
そんなめいれいにちょっとでもさからった子どもたちは、みんなだきつかれて、とかされてしまったというんだ。
ミリの家にやってきたバイキンが、いちばん、おとなしいバイキンだというんだ。
だから、子どもたちはみんな、夜、バイキンがねつくのを待って、町をにげだそうとしいてるんだ。
ロクロはこごえでいった。
「きみ、あのまま、ほうっておくと、夜中になって、あいつ、子どもを生むよ。いっぺんに二億も、三億も生むよ。」
「ほんとか!」
「バイキンは、おとうさんとおかあさんがいなくたって、ちゃんと、子どもをつくれるんだよ。ちょっと、あったまればね。朝になると、そいつらがまた、おとなのバイキンになるんだ。そうしたら、こんな家の千や二千、ピシャピシャふみつぶされちやうぞ。
あっ、こうしちゃいられないんだ。
じゃ、早くこいよ。
みんな、こわがってるから、待っててくれないよ。」
と、いって、ロクロはあわてていってしまった。

ミリは大いそぎで、カバンの中に、いろいろなものをつめはじめた。
タオル。歯ブラシと歯みがき粉。さいふ。スケッチブック。クレヨン。えんぴつ。けしごむ。石けん。パン。チーズ。
――そこで手をとめた。
待て、ミリ。

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2011年10月19日 (水)

「バイキンです よろしく」第十二回

《おはなし》
「おねがいだよ! かえって!
ぼくをくるしめないで!
かえってったら、かえって!」
ロクロはミリのいうことをどうしてもきかなかった。
ミリは、すごすごと、かえらなくてはならなかった。
あーあ、どくやくもだめか!

「ミリ、夕はんはカレーライスにしろ!」
と、バイキンがめいれいした。
ミリはだまって、なべに、カレー粉を二十三かんあけた。それから、コショーを大さじに百四十六ぱいと、トンガラシを大さじに、百八十九はいあけた。それで、カレー粉も、コショーも、トンガラシもからになった。
バイキンのやつが、死ななくても、からくて、からくて、とびあがればいい。
そうしたら、うんとわらってやる!
――ところが、バイキンはからだのいろを、ほんのすこし、ももいろにそめたきりだった。
カレーライスをたべおわると、バイキンは、
「ちょっとからいが、とてもうまかったよ。」
と、いって、まださらについていたのこりを、手みたいなとんがりにすくっては、ペロペロなめた。
チェッ、にぶいやつ!
夜になると、バイキンはいった。
「ちょっとさむいから、ストーブをたいてくれ。」
石油ストーブに火をつけてやると、バイキンはあんしんして、ねむった。
そこへクスリやのロクロがやってきて、ドアをたたいた。ロクロはミリを外によびたして、いった。
「さっきはごめん。
きみ、町では今、みんなヘリコプターにのって、にけだすところだよ。きみもにもつをまとめて、すぐ公園にこいよ。」
あわてていこうとするロクロをひきとめてきいたみた。

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2011年10月12日 (水)

「バイキンです よろしく」第十一回

《おはなし》
ミリは思わずさけんだ。
「やったぜ、ベイビー!」
――ところが、バイキンはヒューッと長いためいきをついていったんだ。
「日なたぼっこなんて、なれないことをするもんじゃない! おお、しみる! こんなぬるま湯なのに!」
バイキンは「こんなぬるま湯」といったんだ。
そう、水は百どよりあつくはならない。
……とすると、このバイキンはいつも、ドロドロにとけた鉄のふろにでもはいっているのかな。
ミリはがっかりした。

本のおわりにはこう、書いてあった。
「しかし、
バイキンを殺すには
なんといっても、
どくやくにかぎる!」
ミリはさっそく、クスリやへとんでいった。
けれども、クスリやのロクロは、どうしてもミリにどくやくを売ってくれなかった。
どうしてかというと……

ロクロはいうんだ。
「ぼく、こわいんだよ。バイキンが。
もし、ぼくがきみにどくやくを売ったことがバイキンにわかったら、どうなる?
バイキンはきっと、ぼくを殺しにくるよ!」
「だからそのまえに、ぼくがバイキンを殺してしまうんだよ!」
「きみ、バイキンはこの町だけで、ひとばんに、千びきもわいたんだ。そいつらは、みんなひみつでんわや、ひみつむせんでれんらくしているんだよ。今、ぼくがきみとこんな話をしているんだって、きかれているんだよ、きっと。」
「でも、ゆうきをださないと、いつかは、ぼくら、ぜんぶ、バイキンにやられてしまうよ。」
すると、ロクロは、まっ青になって、地面にすわりこんだ。

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2011年10月 5日 (水)

「バイキンです よろしく」第十回

《おはなし》
日光をあびると、バイキンはちょっとたちどまった。
いすにかけた。
「日なたぼっこしているとね、からだがいたくなるんだ。
でも、それはからだの中のバイキンが死んでいくしょうこだから、じっとしていなくちゃいけないよ。」
と、ミリはちゅういして、家にはいり、ドアをしめ、まどから、じっと、バイキンのようすを見まもった。
いまに、きっとあの強い日光がからだの中にしみこんで、くるしみだすぞ!
ざまあみろ!
――ところが、ミリのけいかくは、かんぜんしっぱいだった。いくらまっても、くるしむどころか、かえって、いいきもちでねこんでしまった。
ゆうがた、ちょうど海水浴からかえった人のように、ひふをココアいろにやかれて、バイキンはごきげんでもどってきた。

本には、
「バイキンはねつに弱い。」
とも書いてあった。
よし、こんどはこれでゆこう。
すぐミリはおふろをたいた。
湯がグラグラと、にえたった。

ミリはその湯で、たまごを一こゆでてから、バイキンにいった。
「バイキンさん。おふろがわいたからさきにはいって。」
「ふろだって! 今、ふろをたけといおうと思っていたところだ。気がきくぞ、チビ。」
バイキンはふくをぬがないから、かんたんだ。
バイキンはいきなりジャブンとふろにとびこんだ。
「あっちっちっちっちっ……。」
と、バイキンが苦しみだした。

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2011年9月28日 (水)

「バイキンです よろしく」第九回

《おはなし》
バイキンがタバコをくわえると……
――といってもひょっとこの口につきさしただけだが――
ミリはマッチで火をつけてやった。
ひょっとこの、クルリとしためだまがいった。
「わたしがかんがえていたように、やっぱり、おまえはよい子だね。
そう、子どもは子どもらしく、おとなのいうことをきかなくてはいかん。」
へやはけむりでモウモウになった。
ミリはかんがえこんだ。
どうやってバイキンを殺そうか。

「バイキンを殺すには」という本をよんでみた。
それによると――
バイキンは日光に弱い
と、書いてあった。
ミリは、まずこのやりかたで殺そうと思った。
家のまえに、日なたぼっこようのいすをおいた。
それから、バイキンにいった。
「バイキンさん。へやの中でタバコばかりすっていると、病気になるよ。
バイキンさんようのいいいすを外に出したから、日なたぼっこしたほうがいいな。」
バイキンはくわえタバコでいった。
「え? バイキンが病気になるって?
そんなーいくらなんでも……ばかばかしい!」
「うそじゃないよ。
バイキンを殺す新しいバイキンが月ではっけんされたんだってさ。しんぶんでよんだよ。それに……
バイキンさん、いくつ?
「うまれてからまだ、一日もたっていないんだ。」
「じゃ0歳だね。それならいちばん病気にかかりやすい年なんだよ!」
「ほんとうか。こうしてはおれん。よし、それじゃ、さっそく……。」
バイキンは外に出た。

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