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2008年7月31日 (木)


ノーライフキング、再び

ディレクターの、ともおです。

今週の復刊の中に、いとうせいこうさんの『ノーライフキング』が入っています。1980年代以降、多彩な表現活動をされていた、いとうせいこうさんの「小説」では一番有名な作品かと思います(『ワールズ・エンド・ガーデン』も評価が高かった記憶がありますが)。この本が書かれた80年代後半というと、ファミコンの登場で、家庭用TVゲームが小学生の間でブームになりはじめた頃です。とくに「ドラゴンクエスト」などのRPGが与えた影響は大きかったかと思います。この物語に登場する人気のゲームソフト「ライフキング」には、別ヴァージョン「ノーライフキング」があると噂され、そのソフトは、いったんはじめたら、クリアしなければ呪われるという、まことしやかな「都市伝説」が小学生の間で流布されていました。やがて現実に「ゲームの中のような呪われた事件」が起き、小学生たちを震撼させていきます。さすがに、当時読んだきりで、全部は覚えていないのですが、三島賞の候補になった高い文学性を持ち、また市川準監督によって映画化された作品もクールな仕上がりで、「ノーライフキング」という作品は、当時の風俗を写したものであるという以上に、不思議な作品世界観を持ったイメージが記憶に残っています。その後、よく見かけることとなる、ゲーム的仮想空間とリアルの相克、というテーマの先駆けでしたね。ゲームの中で主人公が死ぬと、「好きだったもの」が、墓標として残される、という場面が印象的です。ゲームが、子どもたちの生活にもっと密着してしまった現代には、より響くところがあるかな。

■ 『いとうせいこう』復刊特集ページ

最近もまた「都市伝説」がブームです。マスコミや大人が面白がる前に、小学生の間で、ひそかにジワジワと蔓延していく感覚にこそ妙があるわけですが、あれはリアルタイム小学生じゃないと味わえない感覚ですね。逆に、会社員だけにささやかれる「伝説」はないものでしょうか(サラリーマンNEOっぽいですが)。そういえば、伊井直行さんに『さして重要じゃない一日』という作品がありました。会社員が、コピー機付近で紛失した書類を追っているうちに、社内に存在する、もうひとつの「社内便」の存在を知ってしまうというお話。大きな会社に勤められている方には、言ってはいけないことになっている伝説の「地下部署」の存在などリアルに感じられるかも知れません(絶版みたいですが、リクエストはなかったです)。

投稿時刻: 午前 09:00
日本文芸 |

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