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2008年8月15日 (金)


トラウマ!

ディレクターの、ともおです。

このところまた注目が集まっているようなので、復刊ドットコムから甦った二大作家の「トラウマ作品」のご紹介をしたいと思っております。トラウマ作品と言っても「心の傷」というよりは、幼い頃に読み、少なからずインパクトを受けて、その後の成長に影響を及ぼしたものというものの総称という感じです。条理を超えた「わけのわからない」作品であったために、未消化のまま心に残り、大人になっても、あの不気味な作品はなんだったのか?夢で読んだ本だったのか?と記憶の中でくすぶっている。そのモヤモヤした感じを確かめたくて、もう一度、あの本を手にしたい、という多くのリクエストが復刊ドットコムには寄せられていました。1960年代後半から70年代前半、昭和で言うと40年代というのは、児童文学読み物の「魔の領域」ではないかと個人的には思っています。1960年代、山中恒さんの作品に代表される「戦後児童文学」や、佐藤さとるさんの和製ファンタジー、そして斉藤隆介さん、松谷みよ子さんの創作民話などが登場し、やがて古田足日さんを経て、灰谷健次郎さんが登場する70年代に受け継がれる「児童文学正史」がある一方で、爛熟しはじめた児童文学出版は、かなりきわだった異色の作品を許容する土壌を持つようにもなっていました。こうした児童文学のアナザーサイドは、その後、時代に淘汰されてしまったために、二十一世紀まで残されることはなかったわけですが、当時、そうした作品を読んだ子どもたちには、しっかりと、あの異色作品の記憶が刷り込まれていたのです。

その代表格が大海赫(おおうみあかし)さんです。独特の世界観をもつ物語と、版画や点描画などの技法を駆使した強烈なイラストで、人気を博していた児童文学作家、大海赫。多くの作品を発表し、1970年代には多数の単行本が発行されていましたが、その後、長らく品切れ、絶版状態が続いていました。復刊ドットコムには、かつて大海作品に衝撃を受けた人々が集まり、『ビビを見た!』の復刊が実現。ファン代表として吉本ばななさんの応援もあって、『ビビを見た!』は好調な再デビューを果たし、その後、新刊を含む十作品が刊行され、児童文学作家、大海赫は完全に復活を果たしたのです。

Photo 『ビビを見た!』
著  者:大海赫
出版社:ブッキング
サイズ :A5変形判 上製
定価   :1,890円(税込)

詳しい物語はこちらから


もう一人が、佐野美津男さん。戦災孤児としての経験や、子どもに対しての独自の視線と表現力を持つことで知られる児童文学作家です。「子ども学」に代表される評論にも定評があります。復刊ドットコムから甦った『ピカピカのぎろちょん』は、佐野美津男作品の中でも、特に異色度が高く、ひとつの伝説として語られていた作品でした。当時の社会情勢が孕んでいた空気が児童文学作品に持ち込まれ、不条理な雰囲気に満ちあふれています。現代の視点であらためて読み直されるべき快作であり、怪作です。他にも、復刊ドットコムからは、国土社さんの『創作子どもSF全集』の中で『だけどぼくは海を見た』 『犬の学校』が復刊しています。個人的には『にいちゃん根性』みたいな、ちょっと山中恒風作品も好みだったりしますが、あれも破調と言えば破調で、考えて見ると破調以外の作品を読んだことがない、そんな作家さんです。

Photo_2 『ピカピカのぎろちょん』
著  者:佐野美津男
出版社:ブッキング
サイズ : A5変形判 上製
定価   :1,890円(税込)

詳しい物語はこちらから


先日、ご紹介しました『光車よ、まわれ!』もそうですが、異色児童文学作品の復刊を復刊ドットコムは実現して参りました。さあ、次は、岩本敏男さんか、金重剛二さんか、なんて思ったら、リクエストすら入っていないなあ、という現状だったりして。アナザーサイド児童文学の世界はまだまだ深く濃いところにあるようです。僕も自分で立てたリクエストはあるのですが、なかなか票が集まらなかったりして、切ない思いをしております。皆さんも、是非、記憶に眠る一冊を呼び起こしてみましょう。

■ 『大海赫』復刊特集ページ
(大海先生と吉本ばななさんの対談も掲載されています)

■ 『佐野美津男』復刊特集ページ

投稿時刻: 午前 09:00
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