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2008年8月12日 (火)


そして「光車」は、回り続ける。

ディレクターの、ともおです。

天沢退二郎さんの『光車よ、まわれ!』は、昭和児童文学ファンタジーの代表格のように思われながらも、ちょっと不思議な位置づけにある作品だと思っています。仏文学者、宮澤賢治研究者、そして詩人である、天沢退二郎さんが1973年に上梓された『光車よ、まわれ!』は、絶版・品切れとなっても、伝説の児童文学ファンタジーとして語り継がれ、僕が記憶する限りでも、1990年代になって勃興したネットでの読書系「会議室」(というのはパソ通時代、古いですねー)や、その後の「掲示板」でも、思い出の「凄い本」を語る時、必ず登場する名前であったかと思います。2000年に誕生した復刊ドットコムは、こうした、ささやかれ続けてきた諸々の伝説を具体的な要望としてまとめ、復刊に結びつけるサイトとして活動してきましたが、『光車よ、まわれ!』の復刊は、その中でも、かなり大きな事件ではなかったかと思うのです。1960年代後半から70年代前半と言えば、眉村卓さんなど日本SF第一世代陣が描くジュブナイルSFが活性化していた時代ですが、「文学者」サイドからの児童ファンタジーへのアプローチは、SFや、また当時の「児童文学」とも異種のものを、少年読み物の世界に持ち込みました。「ちくま少年文学館」は、小松左京さんなどSFフィールドの作家さんも入ってはいたものの、文学者カラーの強い作家さんによる読みもの選集で、先んじて、辻邦生さんの『ユリアと魔法の都』もこのレーベルから刊行されています。『光車よ、まわれ!』は、より子どもたちの生活感に密着した「日常」に忍び寄る闇のフィールドを描いたゾクゾクするような感覚を持っていて、同じように学校を舞台にしたジュブナイルSFでは得られないような世界観を見せてくれました。この蟲惑的な作品世界に感応してしまった人たちが、後に、復刊へのリクエストを投じてくださって、更に、天沢先生の『オレンジ党』シリーズも刊行され、天沢ワールドの復活が実現されていくことになります。

さて、このたび、『光車よ、まわれ!』が、文庫化されることが決まりました。復刊ドットコムを運営するブッキングからではなく、良質なYA作品を文庫化することで知られているジャイブさんのピュアフル文庫の一冊に収められるのです。ブッキング版は、復刻として司修さんのイラストもそのままに復刊されていますが、文庫版『光車よ、まわれ!』は、ぐんと趣を変えて、新装、新しい挿絵、三浦しをんさんによる解説など、若い読者に広く手にとってもらえるような体裁となっているようです(内容的にも、現代的ではない部分があるのは、どうしているのかなあ、と思うところなのですが)。ブッキングとしても、天沢先生の世界が、再度、広く読者に認知されることを願っておりますので、今回の文庫化を楽しみにしていました。旧版をお持ちの方も、是非、新しい文庫版を手にとっていただければ幸いです。ジャイブさんからいただいたリリースに、『二十世紀少年』や『電脳コイル』にハマった方は是非、との担当編集者さんのコメントがあるのもまた新しい視点です。なるほど。回顧趣味ではなく、現代の、それこそ『電脳コイル』世代に、「光車」が果たして、どのように読まれるのか、これは楽しみですね。9月上旬発売予定、ただ今、予約中です。

以前、天沢先生が、講演の中でフィリップ・ブルマンのライラシリーズの、あの第三部に登場する冥府に言及し、「光車」の中の闇の世界との比較をされていて、とても興味深く思ったものです。ある機会に、天沢先生とお話をさせていただいた時、現在の日本のファンタジーで注目されている作品はありますか、とお尋ねしたところ、この世(サグ)と異世界(ナユグ)の表裏を行き来する、例の物語をあげてくださいました(極秘情報)。なるほど、あそこにも「光と影」の二重性は存在したのです。煌々と輝く光車に照らされて、暗黒の世界は、より深い闇をたたえます。いや、闇の世界が描かれるからこそ、この世の光が輝くのですね。さて、文庫として甦る、新しい『光車よ、まわれ!』の魅力的な世界を、是非、お楽しみください。

Hikariguruma 『光車よ、まわれ!』
著者:天沢退ニ郎
カバーイラスト、挿画:スカイエマ
カバーデザイン:飯田武伸
解説:三浦しをん
A6判 304ページ 693円(税込)



■『天沢退二郎』復刊特集ページ

投稿時刻: 午前 09:00
児童書、絵本 |

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今では、その創作ファンタジーが全てブッキングから復刊済みだ。私もまた十代の頃から 続きを読む

受信: 2008/08/13 13:07:40