菊池寛ショー
ディレクターの、ともおです。
第56回の菊池寛賞が発表になり、復刊ドットコムでも復刊をさせていただいている、偉大なアーティスト、安野光雅さんと、かこさとしさんが受賞されました。お二人とも文章も書かれますが、まずは画業ありきではないかと思っていたところ、この賞は、菊池寛氏が生前に、特に関係の深かった「文学、演劇、映画、新聞、放送、雑誌・出版、及び広く文化活動一般の分野において、その年度に最も清新かつ創造的な業績をあげた人、或いは団体を対象」にした賞であるとのことで、特に文章による文芸作品にこだわらないところなんですね。受賞おめでとうございます。
TVドラマの影響で、菊池寛氏の『真珠夫人』の復刊が新潮文庫からなされたのも、もう何年も前の話かと思います。復刊ドットコムでも多くの得票を集めた作品でした。大衆小説作品は、たとえ著名な文学者の筆によるものでも、出版流通の世界から消えていってしまうのは早いものです。僕も学生の頃には、昭和三十年代の角川文庫収録のものなどを古書店で探して、『青春国会』とか、それこそ氏の通俗的な作品も読んだことがありました。その作家の全作品のうち、だんだんとそぎ落とされて、一部の代表的作品だけが遺る、というのは過去のことで、現在は、青空文庫さんのようなネットアーカイブが、出版流通に寄らず、その作家の偉業を伝えてくれるのは嬉しいところです。『父帰る』や『恩讐の彼方に』にような代表作以外にも菊池寛作品を、もっと現在の若い世代が読んでくれると良いなと思っています。個人的に好きなのは『入れ札』という作品。捕り方から追われた国定忠治一門は逃げのがれるうちに、ついてきた子分たちも精鋭の10人程度となったが、件の「赤城山」を前にして他国へ逃げ延びるには少々、人数が多い、という状況。せいぜい二人しか連れていけない。そこで、忠治は、自分に誰がついてくるべきか、子分たちに問うのだが・・・。というところで、この忠治大好き子分たちの思惑が、それぞれに交錯する、男騒ぎの愛憎と嫉妬の好短編。太宰治の『駆けこみ訴え』における、キリストの使徒たちの、キリストの寵愛をめぐる愛憎劇のようでもあります。まあ男同士の愛と憎しみの関係性の複雑さもまたドキドキしたものに満ちていたりしますので、お若い方たちも是非、クラシックな文芸の世界に萌えどころを探していただきところです。
投稿時刻: 午前 09:00
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